2007年12月05日
咳エチケット

朝日新聞 天声人語 2007年12月3日付け より
風邪のはやる東京で昨日、出勤途中に電車内の「咳(せき)エチケット」を観察してみた。日曜だが、立っている人も多い。若い男性がつり革を握ったままゴホゴホやっている。口を手で覆わないから、前に座った人は頭の上から咳を浴びている▼大きく咳(せ)き込んだのは、端に座る高齢の男性だ。やはり口はノーガードだから、かなりの飛沫(ひまつ)があっただろう。目に見えなくても数メートルは飛ぶそうだ。咳のことを古く「しわぶき」と称したが、言い得て妙である。電車の中は、野放図なしわぶきが随分目立つ▼この冬、インフルエンザが異例に早く流行している。国立感染症研究所の感染症情報センターによれば、定点調査の患者は調査を始めた87年以降で最も多い。年内に本格的な流行になると心配されている▼かからない用心は無論だが、うつさない配慮も欠かせない。「咳エチケット」は、そのために厚労省が呼びかけた。咳の際はティッシュなどで鼻と口を押さえる。ティッシュはふた付きのゴミ箱に捨てる。症状があればマスクを着用する。三つの心得で効果は上がるそうだ▼インフルエンザの名を日本人が知ったのは、遠く明治の中ごろという。庶民はもっぱら「お染風(そめかぜ)」と呼んだ。『修禅寺物語』の作家岡本綺堂(きどう)は、「猛烈な流行性を持つ恐るべき病に、愛らしい名を与えたのは江戸っ子らしい」と随筆で回想している▼その綺堂も老父をインフルエンザで亡くした。お年寄りや子どもには今も怖い病気だ。うつさないのは、「配慮」というより「責任」だと心得たい。
Posted by やんち at 08:49│Comments(2)
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この記事へのコメント
そうですね
Posted by 湘南太郎
at 2007年12月05日 11:42

☆ 湘南太郎さん
記事にもあるように、「配慮」というより「責任」ですよね‥
記事にもあるように、「配慮」というより「責任」ですよね‥
Posted by やんち
at 2007年12月05日 13:24
